羽田には A滑走路からD滑走路までの4本が存在しますが、それらを毎回使っているわけではありません。どのように使用滑走路を決定しているのか、羽田を例に解説します。
なぜ滑走路を全て使わないの?
羽田の滑走路を一度見てみましょう。
A滑走路 3000m
B滑走路 2500m
C滑走路 3000m
D滑走路 2500m
羽田はA~D滑走路を持っていますが、常に一定の滑走路を運用しているわけではありません。
んー 電車の駅みたいに常に同じところ使ったら、もっと時間通りに飛行機飛ばせるんじゃない?
しかし、空港の場合、そうすることはできません。
その理由は、
風向きによって離着陸の方向を変えなければいけないから
そうか、紙飛行機も追い風の方が遠くまで飛ぶもんね
いや、向かい風の方がいいんです。
飛行機の離着陸時は、向かい風で行われます。その理由は、飛行機が浮く原理にあります。飛行機が飛ぶのは、前から来た空気が翼を流れることで翼の上下に圧力の差が生じて、翼が上に持ち上げられます。詳しくはまた別の記事で紹介したいと思います。
その一方で、一旦大空に飛び立ってしまえば、追い風の方が早く飛ぶことができます。これは、紙飛行機と同じ原理ですし、この記事(飛行機はどれくらい速く飛ぶの?)でも紹介したように、ニューヨーク→羽田 よりも 羽田→ニューヨークの方が早く着きます。
ちょっと一旦まとめ
・離着陸時は「向かい風」がbetter
・高高度飛行中は「追い風」がbetter
北便と南便
使用滑走路を決定するもう一つの要素は、「北便 or 南便」です。
羽田に離着陸する全ての飛行機は、目的地(出発地)によって、北便または南便に分類されます。
基本的には、
北便 ... ヨーロッパ アメリカ 北海道 東北 一部アジア(北京etc)
南便 ... アジア 西日本 オーストラリア
となっています。これは、飛行機が離陸直後に羽田空港よりも北側の航空路を通るか、南側の航空路を通るかによって、分類されています。
羽田空港の実際の運用方法
ではこれから、現在の羽田空港の滑走路運用を解説して行こうと思います。
※現在の滑走路運用は、2020年頃に東京オリンピックに向けて、さらに効率の良い運用方法に変更されることが計画されています。
2020年3月に運用方法が変更され、現在はさらに多くの飛行機に対応できる方法となっています。「現在の運用方法」や「今飛行機が離陸着陸する滑走路」が知りたい方はコチラの記事をご確認ください!(2020年12月追記)
以下は2020年3月以前の運用方法になります。
南風時運用
南風なので、北→南が基本です。
画像引用:羽田空港のこれから - 国土交通省
【南風運用】
離陸北便 C滑走路 16L
離陸南便 A滑走路 16R
着陸北便 D滑走路 23
着陸南便 B滑走路 22
着陸便は北便と南便がクロスしてアプローチするよ!
北風時運用
北風なので、南→北が基本です。
画像引用:羽田空港のこれから - 国土交通省
【南風運用】
離陸北便 C滑走路 34R
離陸南便 D滑走路 05
着陸北便 C滑走路 34R
着陸南便 A滑走路 34L
離陸北便と着陸北便はどちらもC滑走路34Rを使うよ!
ポイント!
1. 北便は本数が少ない!
羽田空港が扱う便は、国内の主要都市へ向かう線で、そのほとんどは南便に分類されます。だから、北風運用時は、北便の離着陸両方をC滑走路一つでさばけるんです。
2. C滑走路のルートはD滑走路の上を通る
南風運用時、C滑走路から南に離陸した機体(北便)は、D滑走路の真上を通ります。そのため、離陸中はD滑走路への着陸は基本的にしていません。しかし、便数の多い南便だと、C滑走路の離陸を待っていられないため、D滑走路で南便ではなく、便数の少ない北便を扱うことにしました。その結果、着陸前に一度クロスしてアプローチするようになりました。
3. A滑走路とB滑走路は重なっている!
地図を見てわかるように、西の端で、A滑走路とB滑走路は、重なっています。その結果、A滑走路は3000mあるものの、全てを使い切ると、B滑走路の運用を中断することになります。一方で、アメリカやヨーロッパと日本を結ぶ大型機は、離陸に3000mの長さの滑走路を必要とします。なのに、3000mある滑走路はAとCの2本のみ!
その結果、実際にアメリカやヨーロッパ便、つまり北便の離陸には全てC滑走路のみが使われています。
TOKYO2020に向けた羽田空港の新運用
新運用に関しては、最新情報をこちらの記事で詳しく解説しているので要チェックです。
[以下2020年以前の情報です。]
2020年の東京オリンピックにより、国際線の需要が大幅に増加することが見込まれるため、羽田空港は、より多くの便をさばけるように、新たな運用方法を検討しています。具体的には、南風運用を以下の画像のように変更する予定です。
画像引用:羽田空港のこれから - 国土交通省
しかし、この運用では、着陸便が都市部上空を通過するため、騒音問題や落下物の危険性の観点で、問題視されています。
そのため、この運用は、昼間の15:00-19:00のみ運用と限定した上で、都市部の住民の方々と議論をしています。
この運用方法は、2000年春頃にスタートしたい見通しとなっています。
まとめ
使う滑走路は、その時の風向きと、目的地(出発地)によって、決められていました。
実際に、Flightradar24を見ていると、風向きが変わって数十分経つと、飛行機の並ぶ列が、急に変化することがあります。これを「ランウェイチェンジ(ランチェン)」と呼び、1日に平均数回行われます。
使用する滑走路は、天気にはよりませんが、アプローチするルートは、天気によって左右されます。その話はまた次回!