飛行機の速度を表す指標はいくつもあります。その数字を全て使って、パイロットは飛んでるのですね! 今回はちょっと難しい話ですが、是非読んで見てください。
はじめに
対気速度と対地速度を知らない人は、まずこちらの記事を読んでください!
この記事の中では、「対地速度」と「対気速度」の2種類しか説明しませんでした。
しかし実はこの他にもいくつもの「速度表示」があります。
とりあえず定義を見てみよう。
2.対気速度(airspeed)
航空機と大気との相対速度。対地速度と区別するために用いられる。指示対気速度(IAS),較正対気速度(CAS),等価対気速度(EAS),真対気速度(TAS)などがあり,対気速度はその総称である。
(1) 指示対気速度(IAS:indicated airspeed)
ピトー静圧式速度計の目盛りを読みとった速度で,ピトー取り付け位置および機体姿勢の変化によって生じた速度の誤差は,修正していない値である。この速度は,対気速度計の指示に使われ,一般の飛行操作に用いられる。
(2) 較正対気速度(CAS:calibrated airspeed)
指示対気速度(IAS)に,対気速度系統の誤差(位置誤差,計器誤差)の補正を加えて得た速度。この速度は,主として航空機に対する速度の規定(離陸および着陸速度)に用いられる。
(3) 等価対気速度(EAS:equivalent airspeed)
特定の高度の飛行速度を海面上標準状態の速度に換算したもの。較正対気速度に,その高度および速度に対する空気の圧縮性の影響を補正した速度。飛行機の飛行高度と速度が小さい場合,圧縮性の影響は無視でき,CAS=EASとなる。また,海面上標準大気状態ではCAS=EAS=TASとなる。この速度に動圧が関連するので,機体構造の強度計算に用いられる。
(4) 真対気速度(TAS:true airspeed)
乱れていない大気と航空機との相対速度で,EAS(等価対気速度)にその高度における空気密度比(海面高度の空気密度とその高度の空気密度の比)の修正を加えて得られる。低速機で圧縮性の影響が無視し得る場合,CAS(較正対気速度)に空気密度比の修正を加えて得られる。この速度は航法に用いられる。
3.対地速度(ground speed)
飛行中の航空機の地表面に対する相対的な水平速度をいい,対気速度と区別して用いられる。対地速度は真対気速度に飛行経路に対する風速成分を加味して求められる。
んーむずい!
実際にこの4つの速度について説明しよう!
GSとは?
これは前回勉強した通り、対地速度ですね!
飛行機が300kt出しても、向かい風が50ktあったら、単純計算で250ktしか出ません。
だから、タワー管制官などは、この数値を見て管制を行なっています。飛行機が250Ktで進んでるって言ってるのに 実際は300Kt出てたなんて言ったら、衝突してしまいますね。。
TAS
これが、いわゆる「対気速度」です。正式名称は「真対気速度」。
パイロットが運航に関して必要になる速度はこの真対気速度です。
なので、この真対気速度を知りたいのですが、この速度は直接測ることができません。
飛行機の計器で唯一測定できるのが次のこの速度↓
IAS
これは「指示対気速度」です。
ピトー管と呼ばれる速度を測る機器によって得られた速度の値です。
つまりこの速度が、飛行機の機内で確認することのできる唯一の速度数字なのです。
しかし、このIASとパイロットの本当に知りたいTASの間には誤差が生じてしまいます。
それを補正したのがこちら↓
CAS
これは「較正(こうせい)対気速度」です。
先程の計器によって得られた速度に、誤差を考慮したものです。
この誤差の大きさは各機体によって決まっています。
たとえば「この飛行機は IAS=CAS+1Kt になってる。」みたいな決まりがあり、それを計算します。
誤差とは様々な要因があり、
「ピトー管の取り付け位置」によって正確な値とはズレが生じている。
などがよくある例です。
しかし、これもまだTASとは違うんです。
ポイントは「空気密度」。
高度が高くなればなるほど、空気の密度は下がります。
これは前に「高度」の記事でも説明しましたね。
しかし、そもそもIASを測定しているピトー管は、
空気の圧力によって求めています。
(詳しくは別の記事で説明しますね)
ただ、そこで問題なのは圧力は空気密度によって変化します。圧力とは空気の押す力なのに、空気自身のもつ原子の数が減ってしまっては、押す力も弱くなってしまいますね。
つまり、同じ速度で飛んでいたとしても、高いところを飛ぶと、圧力が小さくなり、速度が小さく表示されてしまいます。
そのために、高度に対応して、補正値が大きくなっていきます。
この補正値をCASに加えることで、やっとTASを得ることができます。
EAS
ラスト一個がこの「等価対気速度」。
これは、上で説明した3つの速度が航空運航のための速度表示だったのに対して、
この等価対気速度は航空機の設計に関する速度です。
例えば、飛行機がどれくらいの速度まで、耐えられるのか。
など航空機の強度計算などに使います。
この速度の計算方法は、
先程のCASに高度や空気の圧縮性の値を補正して、
「海面上標準大気」での速度に変換しています。
TASの求め方とちょっと似てますね。
まとめ
ちょっとややこしくなってきたので、まとめてみましょう。
ちょっとは分かりやすくなった。。かな。
つまり、
ピトー管で得られたIASは高度によって誤差が発生!
それを補正するためにいろんな計算がいるよ!
っていう話なんですね。
5種類の速度について理解できましたでしょうか??!!!!
ちなみに、TAS/EAS/CASは、高度0mの標準大気の中を飛行するなら差はゼロなんです。今までの話をしっかり理解してもらえれば、なぜかわかりますよね?
ね......?
速度ひとつでこんなに大変なんですね。。
パイロットの方尊敬しちゃいます。
おわりに
今回はだいぶ難しい話でしたけど、最後まで読んで下さりありがとうございます。
ちょっとでも飛行機を好きになってくれたら幸いです。
速度の計算むずかしすぎて飛行機きらいになりそう。。
え。。。
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